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月別アーカイブ: 2025年11月

株式会社NSK~ウレタン塗膜防水の基礎(通気緩衝/密着)~

皆さんこんにちは!
株式会社NSK、更新担当の中西です。

 

ウレタン塗膜防水は「連続した無目地の膜」で複雑ディテールにも追随できる万能選手。いっぽうで下地の含水・気泡・気象条件に敏感で、“やり方の型”が寿命を左右します。本回は通気緩衝工法と密着工法の仕組み・選定・標準工程を、現場でそのまま使えるレベルで整理します。

 

1. 用語と基本構成
• 密着工法:プライマーの上にウレタン主材を直接積層し、下地と一体化。軽歩行〜ベランダ・庇などに多用。
• 通気緩衝工法:下地上に通気層(通気シート/通気マット)を敷設→その上にウレタン。脱気筒で水蒸気や下地ガスを逃がし、膨れを抑制。屋上や含水下地の改修向き。
• トップコート:紫外線劣化を抑え、汚れ・擦れを低減する保護層(ウレタンやフッ素系など)。
要点: – 含水・ガスが心配→通気緩衝。 – 軽量・低コスト・工期短縮→密着(ただし下地乾燥・付着が前提)。

 

2. 選定基準(現場判断の軸)
• 下地含水:高い→通気緩衝+脱気。低い→密着可。
• 動き・振動:大→通気緩衝(応力分散)、小→密着。
• ディテール複雑:どちらも可だが、入隅R・端末補強を厚めに。
• 臭気・騒音制限:水性プライマー・低臭タイプを選択、熱工法回避。
• 工程制約:雨期は通気×脱気でリスク分散。晴天続きは密着がスムーズ。

 

3. 必要資機材チェックリスト
• 計測:温湿度計・表面温度計・露点表・含水計・WFTゲージ(湿膜厚)・針式膜厚計(硬化後)
• 施工:撹拌機・計量器・スキージー・鏝・ローラー・メッシュ/不織布・改修用ドレン・脱気筒・マスカー・養生材
• 安全:ハーネス・親綱アンカー・火気厳禁標識・保護具(手袋・マスク・ゴーグル)

 

4. 標準工程フロー(密着工法)
1. 清掃・下地調整:脆弱層除去・不陸補修・入隅R出し(10〜20mm)。
2. プライマー:下地別に選定(第5回参照)。WFTで塗り逃しゼロを確認。
3. 端部・立上り補強:不織布・メッシュで応力分散。入隅・出隅は先行二度塗り。
4. 主材1層目:規定量を均一膜厚で。ピンホール出やすいので、ローラー仕上げで気泡つぶし。
5. 中間検査:気泡・ピンホール・膜厚・段差の是正。
6. 主材2層目:所定膜厚に到達するよう総量管理。端末・立上りを厚めに。
7. トップコート:色むら・塗り継ぎラインを消し、歩行・汚染に備える。
⏱️ 再塗り時間(目安):気温20℃で数時間〜翌日。露点差3℃以上・湿度85%以下を目安に。※実材の仕様書優先。

 

5. 標準工程フロー(通気緩衝工法)
1. 清掃・下地調整:谷・逆勾配を補修(第3回)。
2. プライマー:通気用(半湿潤面可)を選定。吸い込みが強い箇所は二度塗り。
3. 通気シート/マット敷設:重ねは規定幅、ジョイントはテープ等で通気連続性を確保。
4. 端末処理:端部は通気止め(シールや樹脂)で外周からの水分侵入をカット。
5. 脱気筒:高所側・広面中央に配置。屋上規模に応じ複数設置(例:10〜15mピッチ)。
6. 補強:立上り・入隅・貫通部・改修用ドレン周りを先行補強。
7. 主材1・2層:ジョイント段差を消しつつ、通気層に均一に被覆。
8. トップコート:色・艶の均一化、耐候性付与。
コツ:通気マットの断面端部は“毛細管で吸い上げない”よう、端部封止を徹底。脱気筒は日射で温まる位置が効果的。

 

6. 膜厚・使用量の目安(あくまで一般例)
• ベランダ・庇(密着):総膜厚1.5〜2.0mm相当。
• 屋上(通気緩衝):総膜厚2.0〜3.0mm相当。
• WFT→DFT:溶剤・反応収縮で乾燥後は薄くなる前提。総量(kg/㎡)で管理するのが確実。
• 測定:
o 施工中:WFTゲージで湿膜を随時チェック。
o 施工後:試験片・端部の針式/磁気式で参考値を取る(※破壊計測は位置合意)。

 

7. 気象・環境管理 
• 温度:下地・材料・気温が5〜35℃の範囲(例)。高温時は可使時間短縮。低温時は硬化遅延。
• 湿度:85%以下を目安。霧・露・結露は施工中止。
• 露点差:表面温度−露点≧3℃を確保。
• 風:乾燥促進するが、砂塵混入に注意。風下に養生カーテン。
• 雨:降雨予報なら工程を切る(端末まで完結)。

 

8. 端末・立上り・ディテール
• 入隅R:10〜20mmで塗膜破断を防止。R成形→先行塗り→補強布→本体。
• 出隅補強:コーナーパッチで応力集中を回避。
• 改修用ドレン:差し込み+機械固定+止水材で多重化。通気層と面一に。
• 笠木・金物:水返し金物で毛細管上がりを遮断。シールは二面接着で。
• 貫通部:スリーブ+止水リング+可とうシール→上から塗膜包みで再発防止。

 

9. 品質管理(ITP)—“見える化”の要点
• 材料管理:ロット・残量・使用数量(kg/㎡)を日報で記録。
• 写真:
o 施工面:広角→中景→寄り→ディテールの4点。
o 検査面:WFT測定・膜厚ゲージの数値が写る写真。
• 試験:
o テープテスト(付着)
o 目視(ピンホール・泡・段差)
o 必要に応じプルオフ試験(引張付着)。

 

10. よくある不具合と予防・是正 ⚠️
• ピンホール:下地気泡・吸い込み差。→ 気泡止めプライマー・ローラー潰し・薄塗り→重ねで回避。発生部は研磨→再塗。
• 膨れ:含水閉じ込め・ガス膨張。→ 通気緩衝+脱気、含水ログでGo/No-Go判断。生じた膨れは切開→乾燥→補修。
• 白化・艶引け:露点未管理・霧雨。→ 天気読み・時間帯調整。白化部は研磨→再塗。
• ムラ・流れ:過剰塗布・傾斜。→ 規定量・勾配側は多層薄塗り。
• 付着不良:脱脂不足・粉塵残り。→ 清掃徹底・プライマー再施工。

 

11. 安全・臭気・近隣配慮
• 臭気クレーム:低臭材・夜間避け・風下への事前掲示。
• 可燃性溶剤:火気厳禁・換気・静電気対策。
• 転落・滑落:親綱・先行安全帯・通行分離。
• 騒音:撹拌・研磨は時間帯配慮。

 

12. ケーススタディ
12-1. RC屋上(含水高め)→通気緩衝
• 背景:雨上がりの滞水多く、過去に膨れ。
• 対策:通気マット+脱気筒増設。端部封止徹底。主材2層で総膜厚約2.5mm相当。
• 結果:夏期の表面温上昇時も膨れゼロ。引渡し前の散水試験で圧抜け良好。
12-2. ベランダ(乾燥良好)→密着
• 背景:庇付きで乾きやすい。ディテール複雑。
• 対策:密着で端末補強厚め。立上りは2回増し塗り。
• 結果:ピンホールなし、鏡面に近い平滑で美観◎。

 

13. 現場5分チェックリスト ✅
☐ 密着/通気の選定根拠(含水・動き・工程)
☐ プライマー種類・塗布量・WFT写真
☐ 端末・入隅・立上りの補強布配置
☐ 総量(kg/㎡)と所定総膜厚の到達見込み
☐ 通気層の端部封止と脱気筒位置
☐ 気象(温度・湿度・露点差3℃)のログ
☐ 中間検査の是正事項の完了
☐ トップコートの色・艶の均一性

 

14. まとめ—“型を守れば裏切らない”
ウレタン塗膜は下地と気象の管理さえできれば、どんな形にも“連続膜”で応えてくれる頼れる工法。通気緩衝で含水・ガスを受け流し、密着で軽快に仕上げる。膜厚=寿命と心得て、総量・WFT・再塗時間・露点差を数字で管理しましょう。

 

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株式会社NSK~プライマーと含水率管理~

皆さんこんにちは!
株式会社NSK、更新担当の中西です。

 

プライマーは“魔法の糊”ではありません。 下地と主防水の“通訳”であり、付着・密着・バリア・封止・濡れ性の最適化という“機能設計”そのもの。もう一方の主役は含水率。水を抱えた下地に膜を被せれば、膨れ・白化・剥離は必然です。本回は、下地別のプライマー選定、塗布量・オープンタイム、露点・含水の管理を数値でマネジメントする方法を解説します。

 

1. プライマーの役割を5分で整理
• 付着向上(アンカー効果):微細孔へ浸透→機械的かみ込みを作る。
• 表面改質(濡れ性UP):表面エネルギーを上げ、主材が“馴染む”状態に。
• バリア・封止:アルカリ・可塑剤・残留塩分・粉塵を遮断し界面トラブルを抑制。
• 含水・気泡対策:ポリマーで気泡止め、通気緩衝工法では水蒸気逃げ道を確保。
• 接着界面の均質化:下地ムラ(吸い込み差)を均すことで膜厚の安定につなげる。

 

2. 下地別:プライマー選定の実務

2-1. コンクリート/モルタル(RC・押え)
• 課題:アルカリ・レイタンス・含水・吸い込み差。
• 指針:
o エポキシ系(溶剤 or 水性)で高付着・封止。ピンホール多い場合は下地調整材併用。
o 含水が高め→湿潤面対応型や通気緩衝用プライマーを選ぶ。
o 仕上げがウレタン塗膜の場合は同系統の相性を優先。

2-2. ALC・軽量気泡コンクリート
• 課題:吸水率が高く含水変動が大きい。
• 指針:
o 浸透シーラー(アクリル/シラン系)で吸い込みを均質化。
o 水分を抱えやすいので晴天連続日を確保。端部は可とう型シールで動きに追随。️

2-3. 金属(亜鉛メッキ・ステンレス・アルミ)
• 課題:表面エネルギー低く、酸化膜や油分が付着。
• 指針:
o 脱脂(アルカリ洗浄→水洗→乾燥)→目荒し(#120〜240)→金属用プライマー(変性エポ・変性ウレ)。
o 亜鉛メッキは白錆除去を徹底。端部は二次防水の重ねで金物頼みを避ける。

2-4. 木質・合板・ケイカル
• 課題:吸い込みが強く、寸法変化が大きい。
• 指針:
o 浸透型シーラー+可とう型プライマーで動きに耐える界面を形成。
o 端面(木口)は多め塗りで吸い込み差を消す。

2-5. 旧防水層(ウレタン・FRP・塩ビ・TPO・ゴム)
• 課題:可塑剤移行・表面劣化・相溶性。
• 指針:
o 同系統プライマーが基本。塩ビ→可塑剤ブロック型、TPO→専用接着、FRP→アセトン拭き+サンディング→樹脂プライマー。
o 露出ゴムは研磨+専用プライマーで界面を作る。

2-6. タイル・石材
• 課題:吸水ムラ・表面光沢・目地の“線”が水みちに。
• 指針:
o サンディング→アルカリ洗浄→水洗→乾燥。
o エポキシ系シーラーで封止し、塗膜系やシートのブリッジを作る。

 

3. 含水率・露点の管理—Go/No-Goを数値で
• 含水率の目安(相対比較の実務例):
o コンクリート/モルタル:表層5%以下相当を目標(機器ごとの換算に注意)。
o ALC:乾燥傾向が続く状態で施工(数値は機器差が大)。
o 木質:12〜15%以下相当が目安。

 

• 測り方:
o 非破壊式で面の分布→ピン式で要所の深部傾向を見る“二段構え”。
o 同一位置を時系列で記録し、下降トレンドを確認。
• 露点管理:
o 表面温度と気温・湿度から露点差3℃以上を確保(結露・白化防止)。
o 早朝・夕方の結露時間帯は避ける。温湿度計は常時見える位置に。
• 天気の読み:
o 雨上がり直後/北面日陰は乾きが遅い。
o 風は乾燥を助けるが、ゴミ付着・塵巻き込みに注意。

 

4. 塗布量・オープンタイム・膜厚管理
• 塗布量:メーカー規定○○g/㎡を厳守。多過ぎ=乾かない/少な過ぎ=付着不足。
• WFT(湿膜厚)ゲージで塗り切りを確認。均一に塗り逃しゼロ。
• オープンタイム:早過ぎ→濡れ性不足、遅過ぎ→再付着不良。指触乾燥〜半硬化の間に主材を被せる設計を。
• 二度塗り:吸い込みが強い下地はシーラー→プライマーの二段も選択肢。※溶剤攻撃に注意。
• 攪拌・可使時間:
o 秤量・撹拌時間をタイマーで管理。
o インダクションタイム(反応時間)が必要な二液型は待ち時間を守る。⏳

 

5. 施工手順(標準フロー)
1. 清掃・脱脂:粉塵・油膜・離型剤を除去。
2. 含水・温湿度・露点差の記録。
3. 試験塗り:1㎡程度で乾燥と付着の挙動を確認。
4. 本塗布:端部・入隅・立上りは先行塗り+面塗り。
5. 乾燥管理:人・埃の侵入防止、鳥糞・虫の混入対策。
6. 合否判定:指触→テープテスト→必要に応じプルオフ試験。
6. 互換性・化学的トラブルの未然防止 ⚠️
• 可塑剤移行(塩ビ系):バリア型プライマーで遮断、または同系シート溶着に切替。
• 溶剤攻撃:旧塗膜を軟化・溶解させない配合を選定。事前に隅でパッチテスト。
• アルカリ焼け:モルタル新設はアルカリ強い→封止型+十分な養生。
• 紫外線・熱:夏場の黒色下地は表面温60℃超も。朝夕へシフト。

 

7. 季節別の運用術
• 梅雨〜夏:
o 短時間豪雨→急乾→結露の気象ローテに注意。
o 風通しを活かしつつ、虫・綿毛混入対策。
• 秋:
o 乾燥しやすいが落ち葉で汚染。清掃頻度UP。
• 冬:
o 露点差が小さく結露しやすい。日当たりの良い時間帯に限定。
o 加温は火気・一酸化炭素・延焼対策を最優先。

 

8. トラブル事例とリカバリー
• 白化(ブラッシング):湿潤・露点未管理。→ 再研磨→再プライム。
• 膨れ:含水閉じ込め・ガス膨張。→ 脱気筒増設/通気層見直し。
• ベタつき:過剰塗布・溶剤残り。→ 希釈・塗布量見直し、乾燥促進。
• ピンホール:下地気泡・吸い込み差。→ 気泡止めプライマー/下地調整材追加。
• 付着不良:脱脂不足・可塑剤移行。→ 化学洗浄→バリア型に切替。‍

 

9. 現場5分チェックリスト ✅
☐ 清掃・脱脂は手で触って滑らないレベルまで
☐ 含水・温湿度・表面温・露点差3℃以上
☐ プライマーの種類・希釈・塗布量・WFTを確認
☐ オープンタイムの目安と貼付け/塗り重ね時間
☐ 端部・入隅・立上りの先行処理
☐ パッチテストの結果写真を残す
☐ 通気緩衝の場合脱気計画と配置
☐ 施工後の手触り・テープテストで即時合否

 

10. ケーススタディ
10-1. RC屋上×通気緩衝ウレタン
• 課題:梅雨明け直後で含水高め。過去に膨れ発生。
• 対応:通気緩衝用プライマー+脱気筒ピッチ短縮。WFTゲージで湿膜80μm(例)管理。朝夕施工。
• 結果:夏期の表面温上昇時も膨れなし。引渡し前の散水→圧抜け良好で安定。

10-2. 既存FRPベランダの再防水
• 課題:表面チョーキング・ヘアクラック。溶剤攻撃の懸念。
• 対応:#120サンディング→アセトン拭き→樹脂プライマー。端部はガラスマット増張り。
• 結果:引張付着試験OK。塗膜系仕上げで鏡面に近い平滑を実現。✨

10-3. 露出塩ビシートの上に塗膜
• 課題:可塑剤移行でベタつき・汚染。
• 対応:可塑剤バリア型プライマー+試験塗りで相性確認。オープンタイム短め運用。
• 結果:歩行荷重下でも汚染なし・剥離なし。

10-4. 金属笠木の局所止水
• 課題:ジョイント部からの浸入。油膜と白錆。
• 対応:脱脂→目荒し→金属用プライマー。二面接着でシール。上から端末金物で二重化。
• 結果:台風時も漏水ゼロ。

 

11. まとめ—“プライマー×含水”を制す者が寿命を伸ばす
プライマーは下地と主材をつなぐ設計そのもの。含水・露点・塗布量・時間という4つの数値を揃え、下地別の相性に沿って試験塗り→本番の順で確実に。これだけで膨れ・白化・剥離の8割は防げます。明日から、WFTゲージ・温湿度計・含水計を“必携三種の神器”にしましょう。

 

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